ゆきむらは、とにかく元気な子猫で家中を、走り回ったかと思うと、どこかに入り込んで寝てしまう子でした。
膝の上に乗ったり、抱っこされたりするのもイヤがる子でしたね。
そんな感じで、どこにいるのかも分からず最初の頃は、どこで寝ているのか探し回り、確認して安心する。
そんなことのくり返しでした。
玄関にお客様などが来て、ドアが開くと、どこからかやって来て、サッと外に飛び出してしまうし、なかなか手強いネコでした。
家族みんなが、真っ白ゆきむらに振り回されて、風に飛ばされるコンビニの袋を見ても、ゆきむらを連想するほどでした。
そして、なんとなく昼間は、私がゆきむらの担当で、夜は長女が担当。
そんな役割分担が出来ていました。
脱走捜索に、ご飯の用意、トイレ掃除、休憩時間にはゆきむらを遊ばせ…と、ネコを飼うのってこんなに大変だっけ?
ロビンに、こんな思いしたことない。
それとも私の記憶違い?なんてホントに考えてたほどでした。この頃は完全に、ゆきむらに振り回されていました。
旦那ちゃんには、「付き人かよ。」なんて突っ込まれるほどでした。
夜、一緒に寝るのは長女でしたが、朝起きてくると「ゆきが枕を使うから、私の首が痛い。」
なんてことは、しょっちゅう言ってました。
ゆきむらも、長女の事が大好きでした。
大学生の頃は、アルバイトで帰りが遅い日もありましたが、家に近づいて来る足音を聞きつけると、玄関までお迎えに行くほどでした。
ところがある日、ゆきむらにとっては突然に、その日は訪れたのです。
長女が就職に伴い、家を出ることになりました。
どんなに遅くても、家に帰ってきたお姉ちゃんが、パッタリと帰らなくなり、淋しいと思ったかもしれません。
ただうちは、4人きょうだいなので、しんみりとはなりませんでしたが…。
そして、長女の後を継いだのが、順番で次女でした。
長女の時は、抱いて二階の寝室に連れて行ってましたが、次女は「ほら、行くよ。」と声を掛けるだけでした。
けれど、ゆきむらが従順に付いていくのを見て、やれば出来るじゃん。
なんて見ていました。
でも考えて見ると、長女が居なくなったことで、気持ちに変化があったのかもしれませんね。
そんなある日、長女がお休みで我が家にやって来ました。
心配をよそに、ゆきむらは足音を聞きつけると、鳴き始めました。
あら~やっぱりわかるんだね。
部屋に入ってきた長女に、脛こすりして大歓迎したのです。
そこまででした…。
脛こすりしていたゆきむらが、長女を見上げると
「シャー!」と、威嚇したのです。
長女の腕の中には、当時まだお付き合いしていた彼の、飼っていたネコちゃんがいたのです。
なんと!ゆきむらは、それ以来、長女に近づかなくなりました。
彼のネコを連れてなくても、長女が抱っこすると、腕からスルリと抜け出してしまうのです。
「終わった…」長女が淋しそうに言いました。
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